コラム
2026年09月21日
医療法人の出口戦略 親子承継・M&A・閉院について
今回は医療法人の出口戦略について、実務を通して様々な医療法人の決算書類を見てきた私の所感を記載いたします。
前提として、医療法人の出口は、親子承継・M&A・閉院の3つしかありません。
見落とされがちですが、どの出口を選ぶかによって、医院の価値を「上げる」べきか「下げる」べきかが正反対になります。
さらにその答えは、医療法人が「持分あり」か「持分なし」かによっても変わります。
出口戦略を顧問税理士さんと十分に擦り合わせていない状態で医院経営をしていると、ご勇退時に「こんなはずではなかった…」と大きな後悔が残る可能性があります。
以下に出口戦略ごとの大まかな方向性をお示しします。
| 出口戦略 | 持分あり | 持分なし |
|---|---|---|
| 親子承継 | 価値を下げて渡す | 価値をそのまま渡せる |
| M&A | 価値を上げて売る | 価値を受け取れる形にしておく |
| 閉院 | 価値を引き出してから閉じる | 価値を残さずに閉じる |
親子承継
持分ありの医療法人では、出資持分そのものが相続税・贈与税の対象になります。
利益を出し、内部留保を厚くしてきた医院ほど評価は高くなります。
そのため、評価を下げてから次の世代へ移すのが基本です。
持分なしの医療法人では、法人の財産は相続財産になりません。
社員と理事長・理事が入れ替わることで承継でき、法人の価値をそのまま引き継げます。
M&A
持分ありの医療法人では、出資持分を譲渡して対価を受け取ります。
医院の価値を上げるほど手取りが増えるので、親子承継とは打ち手の向きが逆になります。
持分なしの医療法人には、売り渡す持分がありません。
対価を受け取る方法が限られるため、価値を法人の中に貯めることよりも、その価値を適正に受け取れる形にしておくことが大切です。
閉院
閉院は、医院の価値が最も残りにくい出口戦略です。
持分ありでは、残った財産を受け取るときの税負担が重くなります。
持分なしでは、残った財産は国や地方公共団体などに帰属し、ご家族には戻りません。
どちらの場合も、法人を閉じる前の受け取り方の設計で手取りが決まります。
出口を決めてから、打ち手を選ぶ
ある出口では正解だった打ち手が、別の出口では大きな損失になることがあります。
たとえば持分なしへの移行は一方通行で、元には戻せません。
親子承継には有利ですが、「持分を売る」というM&Aの出口は閉じてしまいます。
節税や制度の移行から入るのではなく、まず出口を決めそこから逆算することが、診療で積み上げてきた価値を最も多く残す方法です。
この記事を目にしたもの何かの縁だと思います。
ご自身のクリニックが想定している出口戦略に沿って医院経営を行っているか、この機会に検討し、信頼できる方に相談されると良いでしょう。
当事務所では、元医療従事者である公認会計士・税理士である代表が、理事長先生と連携し、診療の実態と決算書の両面から出口戦略を設計しております。
出口戦略に沿って経営を行っているか不安な先生は相談に乗りますので、お気軽にお問い合わせください。
※本コラムは、2026年9月時点の法令等にもとづく一般的な解説です。
個別の事情によって最適な判断は異なります。